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保冷容器

保冷容器 受託開発|オーダーメイドで「温度を守る」ための進め方と失敗しない要件整理

2026.01.05

「保冷容器を作りたい」と思って調べ始めると、既製品の保冷ボックスや保冷バッグは数多く見つかります。
しかし、実際の物流・配送・保管の現場では、温度帯・保持時間・外気温・開閉回数・積載形状・回収動線などが複雑に絡み合い、既製品では対応しきれないケースも少なくありません。

そこで選択肢として浮上するのが、保冷容器の受託開発(特注・オーダーメイド)です。
この記事では、保冷容器の受託開発を検討している方に向けて、進め方や要件整理、試作・評価、見積やロットの考え方を実務目線でまとめます。

 

 

受託開発が向いているケース

保冷容器の受託開発は、単に箱を作ることではなく、温度を守る仕組みを設計することが目的です。
特に、次のような条件がある場合は、受託開発のメリットが大きくなります。

  • 温度帯がシビア(冷凍/冷蔵/定温/2温度・3温度など)
  • 輸送時間が長い(中継、長距離輸送、一時保管を含む)
  • 開閉回数が多い(仕分け、積み替え、納品時の開封)
  • 積載物の形状が特殊(細長い、背が高い、箱サイズが固定)
  • 回収して繰り返し使用する(通い箱運用)
  • 軽量化や作業性、スタッキング性が重要視される

「とにかく冷やしたい」のではなく、現場条件に合わせて温度を安定して維持したい場合、受託開発という選択肢が有効になります。

 

 

保冷容器 受託開発の基本フロー

一般的な受託開発は、次の流れで進みます。

  • ヒアリング・要件定義
  • コンセプト設計(温度帯、冷材、構造の検討)
  • 試作
  • 評価試験(想定環境での性能確認)
  • 量産設計(耐久性、洗浄性、コストの最適化)
  • 量産・運用フィードバック

この中で特に重要なのが、試作段階です。
試作は見た目の確認ではなく、設計した条件で本当に温度が維持できるかを検証する工程になります。

 

 

要件定義で必ず整理しておきたい10項目

保冷容器

受託開発がうまくいかない原因の多くは、設計ミスではなく、要件が曖昧なまま進んでしまうことにあります。
最低限、次の10項目は事前に整理しておく必要があります。

 

1)温度帯
冷凍、冷蔵、定温など、守るべき温度の上限・下限を明確にします。

2)保持時間
配送時間だけでなく、ピッキングから積み込み、輸送、受け取りまでの合計時間で考えることが重要です。

3)外気温条件
夏季・冬季で条件が大きく変わる場合は、それぞれを想定した設計や試験が必要になります。

4)開閉回数・開閉時間
開閉時の熱侵入は無視できません。現場で想定される開閉条件をできるだけ具体的に設定します。

5)内容物の条件
形状、重量、初期温度によって、同じ容器でも結果は大きく変わります。

6)必要容量(内寸)
リットル表記ではなく、実際に入れる商品の寸法を基準に考える方が現実的です。

7)冷材の種類と凍結条件
蓄冷剤、ドライアイス、PCMなど、冷材の種類だけでなく、凍結方法や運用も含めて検討します。

8)作業性
重量、持ち手の位置、開閉のしやすさは、現場での使いやすさに直結します。

9)耐久・洗浄・衛生
通い箱運用では、洗いやすさや臭い対策、耐久性が重要な評価ポイントになります。

10)ロット・単価・納期
コストや数量の制約は、できるだけ早い段階で共有する方が現実的な設計につながります。

 

 

受託開発におけるロットの考え方(目安)

保冷容器の受託開発では、ロット数によって実現できる仕様やコスト感が大きく変わります。
そのため、検討初期の段階で、最低ロットの目安を把握しておくことが重要です。

小ロット(約100〜300個)

  • 既存材料や既存構造を流用した設計が中心
  • 縫製品やソフトタイプの保冷容器が向いている
  • 型代や初期費用を抑えやすい
  • 仕様自由度はやや制限されるが、試験導入や検証用途に適している

「まずは現場で使ってみたい」「テスト運用から始めたい」といったケースでは、このレンジが現実的です。

中ロット(約500〜1,000個)

  • 断熱材構成やサイズ設計の自由度が上がる
  • 一部専用パーツや仕様最適化が可能
  • 単価と性能のバランスが取りやすい

業務用途での本格導入や、複数拠点での運用を想定する場合に多いロット感です。

大ロット(数千個以上)

  • 成形品や専用型の検討が可能
  • 長期運用を前提とした耐久設計がしやすい
  • 単価は下がるが、初期費用は増えやすい

全国展開や長期継続利用を前提とする場合に選ばれます。

 

 

試作で重視すべきは「実運用の再現」

受託開発で差が出るのは、試作段階でどこまで実運用を再現できるかです。

  • 温度ロガーの設置位置
  • 開閉条件の再現
  • 外気温の設定
  • 内容物の模擬方法

これらを曖昧にしたまま進めると、量産後に「思ったより温度が持たない」「温度ムラが出る」といった問題が起こりやすくなります。

 

 

見積が変動しやすいポイント

保冷容器の受託開発では、次のような要素で見積金額が変わります。

  • 断熱材の種類と厚み
  • 表皮材や成形方法
  • 縫製や組立工数
  • パーツ点数
  • 試作および試験回数
  • ロット数

要件が整理されているほど、見積の精度は上がり、比較もしやすくなります。

 

 

よくある失敗例

  • 配送時間だけで保持時間を決めてしまう
  • 開閉条件を考慮していない
  • 内容物の変更を想定していない
  • 性能は良いが現場で使いにくく定着しない

いずれも、初期の要件整理で防ぐことができる失敗です。

 

 

まとめ

保冷容器の受託開発は、形状や素材を決める前に、現場条件をどれだけ具体的に整理できるかが成功の鍵になります。
ロット感を含めて条件を共有することで、無理のない設計と現実的なコストに着地しやすくなります。

既製品では対応できない課題がある場合、受託開発という選択肢を検討することで、温度管理の安定化や運用改善につながります。
まずは、自社の運用条件を洗い出すところから始めてみてください。