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ドライアイスに頼らない保冷設計へ——なぜ今見直すのか、で はどう対応するか

2025.11.03

現場からの声

「ドライアイスを減らしたい」「できれば使わない運用に切り替えたい」

という相談が増えています。

背景には、安全配慮(CO₂濃度・素手接触不可)、在庫や単価の振れ幅、開封時の霜・結露など体験面の課題、そして総コストの予見性の低さがあります。

加えて、近年は炭酸ガス(二酸化炭素)の供給難という構造的な問題が大きな要因となっています。

本記事ではまず“なぜ見直すのか”を具体化し、そのうえで「ではどうするか?」を整理します。

1. なぜドライアイスを減らす/使わない方針なのか

ドライアイスの原料である炭酸ガス(CO₂)は、もともと石油精製やアンモニア等の生産工場の排ガスから精製されるリサイクル資源です。

しかし、近年アンモニア生産の海外シフトや石油精製プラントの統廃合により、国内で純度の高い二酸化炭素を得られる工場が減少。結果として炭酸ガスの不足が進み、特に夏場など需要の集中する時期にはドライアイスの供給難や価格変動が生じています。

この供給難は、炭酸飲料の生産をはじめ、冷凍食品・宅配・生協など幅広い分野の物流にも影響を与えています。

生協では数年前から冷凍蓄冷剤(-25℃)を導入し、ドライアイス削減を進めてきましたが、蓄冷剤は温度上昇を抑えるもので冷却能力が異なるため、完全代替は容易ではありません。

それでも、供給リスクへの対応として容器や運用方法の見直しを重ね、ドライアイス0運用へのシフトが加速しています。

見直しが進む主な要因

● 供給リスクの拡大:炭酸ガス不足による供給不安・価格変動
● 安全配慮の負荷:CO₂濃度管理や素手接触不可など、教育・管理の手間が増える
● 在庫と単価の不安定性:契約条件で月次コストの振れ幅が大きく、予算管理が難しい
● 体験品質への影響:霜・結露・過冷却で、開封時の見栄えや取り扱いが悪化しやすい
● “必要以上の低温”リスク:品質変化や結露を招くことがある

結論として、容器の断熱設計・蓄冷剤の温度帯選定・運用(開閉管理や積付)の三位一体で見直すことで、安定運用・体験改善・コスト平準化が期待できます。

2. ではどうするか——対応の全体像(容器×蓄冷剤×運用)

2-1. 容器設計を基軸にする

保冷性能の土台は容器です。
断熱厚、冷材ポケットの数と配置、二重フタ、熱橋対策、スタッキング強度、車載・カゴ車適合、二温度/三温度対応(仕切り・分離シート)などを要件化します。

保冷・保温容器(断熱厚、車載ボックス、カゴ車カバー、2温度/3温度対応、スタッキング) 

2-2. 蓄冷剤は“温度帯”で選ぶ(色分け運用でミス防止)

目標温度帯に合わせ、
0℃(青)/-16℃(透明)/-19〜-21℃(ピンク)/-25℃(黄)を使い分けます。

● 0℃帯(青):過冷却や結露を避けたい品目向け(生花・惣菜など)
● -16℃帯(透明):冷蔵〜冷凍の中間帯・短時間輸送に適用
● -19〜-21℃帯(ピンク):冷凍食品や中距離輸送向け
● -25℃帯(黄):長距離・夏季輸送・大量積載向け

-25℃帯を完全凍結するには、庫内温度-35〜-40℃程度の業務用凍結設備が必要です。
数量・配置・二重梱包の有無で持続時間を調整し、色分けでミスを防止します。

蓄冷剤(温度帯ラインナップ・色分けの目安)

2-3. 凍結設備と運用の最適化

-25℃帯を完全に凍結させるには庫内温度-35〜-40℃が必要。
前日凍結+当日ステージングでピークを平準化し、庫容量・電力契約・人員配置と合わせて運用を設計します。

コラム(-25℃は家庭用-18℃では凍結困難=業務用設備前提の解説)

3. シーン別の現実解(設計の考え方)

A. 留置(生協など)・短時間・開閉少
-16〜-25℃帯の蓄冷剤を中厚断熱容器と組み合わせることで安定しやすい。
直射対策に留置用カバーを併用し、ドライアイス非使用でも温度カーブが収まるか実測で確認します。

B. 車載・中〜長距離・夏日/開閉あり
車載ボックスは二重フタや前面開口で「開けても冷気が逃げにくい」構造に。
-19〜-25℃帯の蓄冷剤は数量・配置最適化で持続時間を伸ばします。
必要に応じて併用も選択肢ですが、まずは容器ランクUPのABテストから検証。

C. カゴ車運用・猛暑・長時間
カバーの断熱厚と熱橋対策が効く。
二重梱包や仕切りで冷気の偏りを抑制。品目によっては-2℃など特注温度帯も検討。

4. 小さく試す——ABテスト手順

● テスト1:容器ランクUP vs 冷材追加(同条件で比較)
● テスト2:開閉回数管理 vs 冷材増量
● 指標:庫内温度カーブ、1便あたり運用コスト、作業負荷、再配送/クレーム率

5. 導入チェックリスト(実装直前の確認)

● 温度帯の適合(0/-16/-19〜-21/-25℃)
● 容器仕様(断熱厚、冷材ポケット配置、二重フタ、二温度/三温度、車載・カゴ車適合)
● 運用条件(距離・時間・外気温・開閉頻度・積載率)
● 凍結設備(庫温・庫容量・電力契約、前日凍結と当日ステージングの計画)
● 安全と体験(CO₂対策、結露・霜、玄関先の見栄えや意匠)

6. 事例イメージ(数値は個別当て込みで提示)

● 生協留置:-16〜-25℃帯×中厚断熱+留置カバーで、非使用運用の到達可能性を検証
● EC冷凍惣菜:-19〜-25℃帯×ハイグレード容器。持続時間が足りなければ配置最適化と
二重梱包を先行検討
● 花卉:0℃帯で過冷却を避け、結露対策を優先。常温帯商品とは二温度分離

7. 相談フロー(CTA)

現場条件(距離・時間・外気温・開閉頻度・積載率・目標温度帯・既存設備)をご共有ください。
容器×蓄冷剤×運用の3案比較(簡易温度カーブ想定つき)を初回無料で作成します。

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まとめ

これまで「安全性」「体験品質」の観点で語られてきたドライアイス削減は、今や炭酸ガス供給難への対応と冷凍物流の持続可能化という、社会的必然のテーマに変わっています。
CSSでは、容器×蓄冷剤×運用の三位一体設計により、供給リスクを低減しながら、安定した温度管理と品質維持を両立しています。