保冷ボックスは、断熱材によって外部の熱を遮断し、内部の冷気を長く保つことで内容物の温度を一定に保つ仕組みです。
構造的には、外気との熱の移動を防ぐ「断熱層」と、内部で冷気を供給する「蓄冷剤」の2つが基本となります。
熱は伝導・対流・放射の3経路で侵入するため、設計と使い方の両方を最適化することで、実際の保冷性能に大きな差が生まれます。
ソフトタイプとハードタイプの違い
保冷ボックスには、ソフトタイプとハードタイプの2種類があります。
ハードタイプは厚みのある断熱パネルを使用し、高い断熱性能と耐久性を持ちます。食品輸送や医薬品など、長時間保冷が必要な現場で多く採用されています。断熱材の厚みは25〜100mm程度が一般的です。
一方、ソフトタイプは軽量で折りたためる利点があり、短時間の配送や店舗間移動などに向いています。断熱層が薄いため、環境温度や開閉頻度に注意が必要です。想定する輸送時間・外気温・内容物に応じて、過不足のないタイプを選ぶことが重要です。
参考記事:https://css-ad.co.jp/soft-hard
保冷の原理と「面当て」の重要性
冷気は上から下に流れるため、蓄冷剤は基本的に「上に置く」のがセオリーです。内容物を上から覆うように、蓄冷剤を“面で当てる”ことで効率的に冷やすことができます。小さい蓄冷剤を点で当てると温度ムラが生じやすく、特に角や上部で温度が上がりやすくなります。
必要に応じて、底面にも補助的に蓄冷剤を配置し、上下からサンドするようにすれば、より均一な温度維持が可能です。冷蔵品には0〜+5℃帯、冷凍品には−16℃や−25℃帯の蓄冷剤を使い分けます。
参考記事:https://css-ad.co.jp/cool-pack-correct-use
落とし蓋やダミーで空間を減らす
ボックス内に余分な空間があると、そこに暖かい空気が滞留して対流が起こり、保冷効率が落ちます。このとき有効なのが「落とし蓋」や「ダミー(緩衝材・空箱)」を入れて、空間を物理的に減らす方法です。
例えば、内容物の上に厚紙や発泡板の落とし蓋を置くことで、上部の空間が小さくなり、冷気が下にしっかり回るようになります。配送件数が多く内容量が変動する現場では、ダミーを入れて内部容積を一定に保つことで、安定した温度管理が可能になります。これはシンプルながら非常に効果的なテクニックです。
参考記事:https://css-ad.co.jp/ondo-mura-boushi
開閉時間と導線の工夫
いくら断熱性能が高くても、開閉時間が長ければ内部温度は一気に上がります。特に仕分け作業や積み込み時の「開けっぱなし」は最大の敵です。作業導線を短くし、必要なときだけ素早く開閉する仕組みを整えることで、温度上昇を最小限に抑えられます。
また、仕分け現場では「先に全ての準備を整えてから開ける」「人ごとに作業エリアを分けて同時開封を避ける」など、運用面での工夫も大切です。現場の温度ログを取ってみると、開閉時間の違いが数度の温度差を生むことがよくわかります。
凍結方法にも注意
蓄冷剤を十分に凍らせていないと、保冷時間が短くなります。特に重ねて凍らせると中心部が凍り切らず、実際に使用するとすぐ溶けてしまうことがあります。ストッカーでは蓄冷剤の間に隙間を作り、冷風が通るように並べるのが理想です。小型の冷凍庫を使う場合も、扉の開閉を減らして凍結効率を高めると良いでしょう。
参考記事:https://css-ad.co.jp/about-coolpack-freezer/
スタッキング対応構造のメリット
複数のボックスを積み重ねて運用する際は、「スタッキング対応」の構造が便利です。フタの上に底面がしっかりはまり、ズレにくい設計になっていると、車内や倉庫で安定して積載できます。これにより、保冷層が潰れず断熱性能も維持しやすくなります。省スペース化と温度保持を両立できる構造です。
参考記事:https://css-ad.co.jp/stacking-box
3温度帯運用への応用
冷凍・冷蔵・常温を同時に扱う場合は、内箱や仕切りを使ってそれぞれの温度帯を物理的に分けます。冷凍・冷蔵の間に断熱シートを挟むことで熱干渉を防ぎ、常温帯には0℃クラスの蓄冷剤を外側に置いて夏場の温度上昇を防ぐなど、シンプルな仕組みで安定運用が可能です。
最近では、留置き配送向けに複数温度帯を同時に管理できる多層構造のバッグも登場しています。外装は厚めの断熱層を持ち、内部を小型ボックスで分離する設計です。宅配や非対面受け渡しが増える中で、こうした構造が現場で重宝されています。
まとめ
保冷ボックスの性能は、素材や厚みといった構造だけでなく、「どう使うか」によって大きく変わります。
・蓄冷剤は上から“面で当てる”
・落とし蓋やダミーで空間を減らす
・開閉は最小限にして導線を短くする
・凍結はしっかり、重ねすぎない
・スタッキング対応構造を選び、現場の安定性を高める
これらのポイントを意識するだけで、同じボックスでも保冷時間や温度ムラの差は数倍違ってきます。CSSが扱う保冷容器シリーズも、これらの原理をベースに設計されています。自社の配送条件に合わせて最適なボックスを選び、日々の運用で性能を引き出していきましょう。
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