食品でもない。
医薬品でもない。
だから、特別な温度管理は必要ない。
そう考えて、接着剤や塗料、樹脂などの工業材料を一般的な環境で輸送していないでしょうか。
もちろん、すべての工業材料に温度管理が必要なわけではありません。
しかし、製品によっては高温や低温の影響を受け、粘度や反応性が変化したり、分離などの品質トラブルにつながったりする可能性があります。
注意したいのが、工場や倉庫の中ではなく、「その間」です。
工場を出てから納品先に届くまで。
トラックへの積み込みを待っている時間。
配送途中の車内。
納品先に到着してから、倉庫へ運び込まれるまで。
こうした時間は、社内の品質管理の目が届きにくい一方で、夏場には想定以上の高温環境になる可能性があります。
今回は、接着剤や塗料をはじめとした工業材料の輸送について、なぜ温度管理が必要になるのか、どこにリスクがあるのか、どのような対策が考えられるのかを解説します。
工業材料にも「温度を守る」という考え方がある
温度管理輸送というと、冷凍食品や生鮮食品、医薬品などを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、温度の影響を受けるのは食品や医薬品だけではありません。
接着剤や塗料、樹脂などの工業材料も、製品によっては温度変化によって品質に影響が出る場合があります。
たとえば、一部の接着剤では、夏場の高温環境を避けるために冷蔵輸送が推奨されています。
また、一定以上の高温環境で保管すると、変質や分離によって使用できなくなる可能性がある製品もあります。
ここで重要なのは、
「接着剤は何℃で運べばいい」
「塗料はすべて冷やした方がいい」
と一括りにすることではありません。
必要な温度条件は、製品によって異なります。
まずは対象製品の仕様書やSDS、メーカーが定める保管条件や輸送条件を確認することが大切です。
問題は「輸送中」だけとは限らない
温度管理というと、
「冷蔵車で運べばいいのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、実際の物流では、輸送中だけを考えればよいとは限りません。
たとえば、製品が工場を出てから納品先に届くまでには、次のような流れがあります。
- 工場や倉庫から製品を出す
- トラックへの積み込みを待つ
- 車両に積み込む
- 輸送する
- 納品先で荷降ろしする
- 倉庫や製造現場へ移動する
この中で、温度が管理されているのはどこまででしょうか。
冷蔵車で運んでいても、積み込み前に屋外で待機する時間が長ければ、その間に温度が上昇する可能性があります。
納品先に到着したあと、荷捌き場に長時間置かれることもあります。
また、一般の荷物と一緒に一部の製品だけを運ぶ場合、車両全体を温度管理することが現実的でないケースもあります。
こうした「輸送の途中にある空白」が、温度管理の弱点になることがあります。
夏場の輸送で確認したい5つのポイント
工業材料の温度管理を考えるとき、いきなり保冷容器や冷蔵車を選ぶ必要はありません。
まずは、現在の物流を整理することが大切です。
1.製品は何℃から何℃までなら問題ないのか
最初に確認したいのは、対象製品の許容温度です。
高温を避けたいのか。
低温や凍結を避けたいのか。
一定の温度帯を維持したいのか。
ここが曖昧なままでは、必要以上に高性能な設備を導入したり、反対に性能が不足したりする可能性があります。
製品の仕様書やSDS、メーカーの保管条件などを確認し、まずは「何℃を超えると問題なのか」を明確にします。
2.温度管理されていない時間は何時間あるのか
輸送時間だけでなく、
- 出荷待ち
- 積み込み
- 途中の積み替え
- 荷降ろし
- 納品後の一時保管
まで確認します。
「4時間の配送だから、4時間守れればいい」とは限りません。
実際には、工場を出てから使用場所に届くまで、6時間、8時間と経過しているケースもあります。
そのため、輸送時間だけではなく、製品が管理された環境を離れてから、再び管理された環境に入るまでの時間を確認することが重要です。
3.どこで温度が上がっているのか
輸送中なのか。
荷捌き場なのか。
駐車中なのか。
納品後なのか。
温度が上がっている場所によって、必要な対策は変わります。
原因が分からない場合は、温度ロガーなどを使って実際の温度変化を測定する方法もあります。
感覚だけで「夏だから危ない」と判断するのではなく、
- いつ
- どこで
- 何℃まで上昇しているのか
を確認することで、対策する場所を絞り込みやすくなります。
4.一度にどれくらいの量を運ぶのか
1箱だけなのか。
パレット単位なのか。
カゴ車単位なのか。
車両の一部だけなのか。
運ぶ量によって、適した方法は大きく変わります。
少量の商品を守るために、車両全体を冷やすことが最適とは限りません。
反対に、大量の商品を長時間運ぶ場合は、小型の保冷容器を大量に使うことで、作業効率が落ちてしまう可能性もあります。
現在の荷姿や輸送量に合わせて考えることが重要です。
5.現場の作業方法に合っているか
温度性能だけでなく、
- フォークリフトで扱えるか
- 積み重ねられるか
- 前面から商品を出し入れできるか
- 使わないときに収納できるか
- 繰り返し使用できるか
といった現場での使いやすさも重要です。
どれだけ温度を守れる容器でも、現場で使いにくければ運用は続きません。
実際の作業手順を大きく変えずに導入できるかどうかも、温度対策を考えるうえで大切なポイントです。
工業材料の温度対策にはどんな方法がある?
対象製品や輸送条件によって、適した方法は異なります。
ここでは、代表的な対策方法を紹介します。
冷蔵車や定温車を利用する
長時間にわたり、大量の製品を同じ温度帯で運ぶ場合には、車両全体の温度を管理する方法が考えられます。
一方で、一部の荷物だけ温度管理したい場合や、一般貨物との混載では、車両全体を冷やすことが効率的でないケースもあります。
どのくらいの量を、どのくらいの時間、どの温度帯で運ぶのかによって判断する必要があります。
パレットカバーを使用する
パレット単位で輸送する製品では、断熱性を持つカバーで製品を覆う方法があります。
たとえば、
- 出荷待ちの時間だけ守りたい
- 車両から降ろしたあとの温度上昇を抑えたい
- 屋外や荷捌き場での一時的な影響を減らしたい
といった場面です。
製品を別の容器に詰め替える必要がなく、現在のパレット輸送を大きく変えずに導入できるケースもあります。
車両用の断熱ボックスを使用する
車両に積む荷物の一部だけ温度を守りたい場合は、車内に専用の断熱ボックスを設置する方法もあります。
車両全体を冷やすのではなく、必要な荷物の周囲だけに温度を守る空間をつくる考え方です。
一般貨物と温度管理が必要な製品を一緒に運ぶ場合などに、選択肢の一つとなります。
対象物に合わせた専用容器を設計する
工業材料の場合、
- 容器の形が特殊
- 一般的な保冷ボックスに入らない
- パレット単位で運びたい
- 決まった時間だけ温度上昇を抑えたい
- 作業工程を変えずに導入したい
といった条件も考えられます。
こうした場合、市販の保冷ボックスを探すだけでなく、現在の物流に合わせて容器やカバーを設計する方法があります。
「とにかく冷やす」が正解とは限らない
温度管理で注意したいのは、冷やせば冷やすほどよいとは限らないことです。
必要なのは、
「低い温度にすること」
ではなく、
「その製品にとって問題のない温度を守ること」
です。
製品によっては、高温だけでなく、低温や凍結を避けなければならない場合もあります。
そのため、
「保冷剤をたくさん入れる」
「できるだけ冷たい蓄冷剤を使う」
といった方法が、必ずしも適切とは限りません。
まずはメーカーが定める保管条件や輸送条件を確認し、そのうえで必要な温度帯、時間、外気温などから対策を考えることが大切です。
まずは一度、実際の温度を測ってみる
現在、夏場の品質トラブルに悩んでいる場合でも、原因が本当に輸送中の温度にあるとは限りません。
そのため、まずは実際の物流環境を確認することをおすすめします。
たとえば、
- 出荷時の製品温度
- 積み込みまでの待機時間
- 車内温度
- 製品自体の温度変化
- 荷降ろし後の待機時間
などです。
温度ロガーを使用すれば、輸送中のどのタイミングで温度が変化したのかを確認しやすくなります。
その結果、
「輸送中は問題なかったが、納品後に温度が上がっていた」
「長距離輸送より、積み込み前の待機時間の方が影響していた」
といったことが分かるかもしれません。
問題が起きている場所が分かれば、必要な部分だけを対策できます。
車両全体を変更する必要があるのか。
パレット単位で対策すればよいのか。
荷捌き場に置かれる時間だけ守ればよいのか。
実際の温度を測ることで、必要な対策が見えやすくなります。
工業材料の温度管理は、現在の物流から考える
工業材料の温度対策は、
「この製品には、この保冷ボックス」
と簡単に決められるものではありません。
- 対象となる製品
- 守りたい温度
- 必要な時間
- 一度に運ぶ量
- 車両の大きさ
- 荷物の出し入れ方法
- 現場での作業
こうした条件によって、必要な形は変わります。
シーエスエスでは、パレットカバー、運送車両用ボックス、カゴ車用カバーなど、用途に合わせた保冷・保温容器をオーダーメイドで製作しています。
「夏場になると品質トラブルが増える」
「輸送中の温度が原因かもしれない」
「冷蔵車を導入するほどではないが、一部の製品だけ守りたい」
「市販の保冷容器ではサイズや運用が合わない」
そのような課題がある場合は、まず現在の輸送方法から整理してみることが大切です。
対象物、現在の輸送方法、守りたい温度や時間などを確認することで、必要な温度対策が見えてきます。
